2006年09月06日

自閉症

自閉症(じへいしょう、Autism)は社会性や他者とのコミュニケーション能力の発達が遅滞する発達障害の一種である。高機能自閉症と低機能自閉症があり、ただ単に「自閉症」という場合は、後述する低機能自閉症の事のみをさす場合もある。

現在では先天性の脳機能障害によるとされており、多くの遺伝的因子が関与すると考えられている。日本では1000人に1〜2人の割合で生じているが、どこまでを自閉症の範囲とするかによって発生率は大きく違う。また男性に多い。

日本自閉症協会によると現在全国に推定36万人。知的障害や言語障害を伴わない高機能自閉症(アスペルガー障害とも言う)など含めると120万人といわれている。

「自閉症」の語感から、ひきこもりに至るような精神状態やうつ病の事を含んでいるように思われる事もあるが、これは自閉症に対する誤った認識である。日本大学文理学部体育学科の教授である森昭雄が2004年〜2005年前後にかけ、講演や自著の中で「テレビやテレビゲーム等が原因で後天的自閉症になる」と持論を展開していたように、近年でも大学教授でさえ誤った認識を持っていた例がある。

研究初期は自閉症といえばほとんど言葉を話さないようなタイプをさしていたため、統合失調症の状態を表す「自閉」という用語を当てて「自閉症」と訳されていたが、徐々に自閉症の概念が拡大するにつれて、自閉症という訳語が不適切になってきたといわれる。特に高機能自閉症の場合は、一般的に恥ずかしいと思って秘密にするような事でも正直に話してしまうなど、むしろイメージ的には自閉とは逆の「自開」であるという人もいる。

DSMの診断基準によると、自閉症の主な症状は3つに分けられる。

限定された興味やこだわり、関心。(同一性保持への欲求、常同行動)
対人関係でのコミュニケーション能力の欠如。
言葉の発達の遅れ。
一般的な低機能自閉症児の特徴の例として、以下があげられる。 

おもちゃ・本物の自動車の車輪や床屋の回転塔などの回転するものへの強い興味。
数字や風景などに対する高い記憶能力。
ある特定の音に対する強い不快感、物を規則正しく並べる行動。
何かして欲しい事があった場合に、近くの人の手を引っ張って対象物の所まで連れていく「クレーン現象」という行動。
又、心の理論の障害により、他人のする事を自分の立場に置き換えられずにそのまま真似するため、手のひらを自分側に向けてバイバイしたり、自分の事を「あなた」などの二人称で、相手の事を「わたし」などの一人称で呼んだりするなどの現象が見られる。

自閉症児者は、耳で聞く事よりも眼で見る事の方が認識しやすいという視覚優位の特性がある。このため、自閉症児に注意を与える時は紙などに書いて見せると効果があるとされる。

ある職場に勤めている自閉症者が噛み付くなどたびたび問題を起こし、口頭で何回も注意を与えても改善しないため、危うく解雇されるところであった。しかし、詳しい人のアドバイスにより机の前に注意書きを置いたところ、問題行動はぴたりと収まった。
「サリーとアン課題」と呼ばれる、他人の心の動き(心の理論)を推測する能力を問う試験がある。この試験では以下のような場面を想定している。

「あなたは友達と同じ部屋でおもちゃで遊んでいました。すると途中で友達がおもちゃをおもちゃ箱に入れてから部屋を出ていきました。友達がいない間に、あなたが友達のおもちゃをおもちゃ箱から取り出して、タンスの中に隠しました。さて、友達が戻ってきて、おもちゃで遊ぼうとするのですが、友達が最初におもちゃを出そうとして探す場所は、おもちゃ箱でしょうか、それともタンスの中でしょうか?」
という質問をする。おもちゃを隠された友達は、隠された事をまだ知っていないので、最初に探す場所はおもちゃ箱の方のはずである。健常児や自閉傾向のない知的障害児であれば3〜5歳くらいで正解出来るようになるが、自閉症児の場合は他人の心の動きを推し量る「心の理論」が障害されているため、かなり高年齢にならないと正解出来ない。

又、一部の自閉症児者では、カレンダーも見ずに特定の日の曜日を答えたりする、いわゆるサヴァン症候群と呼ばれる能力がある場合もある。

他の例として時間の「概念」が希薄な場合もある。時計で時間が分かるような自閉症児者のなかには、時間に強迫的になり全ての事柄がまさにその定められていた瞬間に起こる事を要求する例がみられる事がある。 例えば、「5分待っていて」と約束したくせに6分14秒も待たせたと被害感を持つ、などである。逆に4分30秒で戻れば、まだ5分経っていないので待ち続けるといった場合もある。このような症状をある場合でも、施設を利用出来るようにとウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでは、提示する事により待ち時間を0にするホワイトカードと呼ばれるサービスを行う等、比較的認知された症例である。 ちなみに東京ディズニーリゾートでも同様のサービスを行っていたが、2002年5月20日をもって事前説明なく打ち切るなど、国内では一般的にこれらの症状の認知は低い。

高機能自閉症の場合は知能には問題はないが、やはり「心の理論」の障害のため、会話の雰囲気を理解出来ないなど、対人関係に問題を生じやすい。だが、日本では(一部の自治体を除いて)公的な支援はない。

なお、自閉症の症状は人によってかなり違い、上記の特徴は必ずしも当てはまらない場合もある。

自閉症の分類
自閉症は症例が多彩であり、健常者から重度自閉症者までの間にははっきりとした壁はなく、虹のように境界が曖昧であるため、その多様性・連続性を表した概念図を自閉症スペクトラムや自閉症連続体などと呼ぶ。

なお、「高機能自閉症」と「アスペルガー症候群」、「低機能自閉症」と「カナー症候群」は基本的には同じものであり、臨床的には区別しなくてもよいとされている(言語障害がないものをアスペルガー症候群、言語障害があるものをカナー症候群と分類する場合もある)。本記事では同一の物として扱う。

低機能自閉症
自閉症スペクトラムのうち、知的障害があるもの(一般的にはIQ70以下)を低機能自閉症やカナー症候群と呼ぶ。自閉症研究の初期は主にカナータイプが問題視されていたため、古典的・典型的な自閉症といえばこのタイプのことである。

高機能自閉症
自閉症スペクトラムのうち、知的障害がないもの(一般的にはIQ70以上)を高機能自閉症やアスペルガー症候群と呼ぶ。「高機能」というのは知能指数が高いという意味であるが、平均的な健常者より高いとは限らず、知的障害との境界域の場合もあれば、平均的な健常者をはるかに上回る場合もある。1980年代以降、急速に認知されてきた。

診断名
「自閉症」という言葉には様々なイメージがあり、中には誤っているイメージも多い。このため、医師が親に話すときに「自閉症」という言葉を使うと、親が誤ったイメージを持ってしまう危険がある。このため、より広い概念の「広汎性発達障害」という言葉を使う場合もある。

合併症
自閉症は広汎性発達障害(PDD)の一種であるため、ADHDや学習障害などを併発する場合がある。低機能自閉症は知的障害も合併している。まれにダウン症と合併する例もある。

なお、興味深いことに、自閉症者は健常者と比べて統合失調症に罹患する確率が極めて低いという報告がある。例えば一般人の統合失調症罹患率は0.8%だが、自閉症者の罹患率はこれよりもずっと低く、報告は世界で10例に満たない。参考ただし、文献によっては一般人と同率、あるいはより高率で発生すると書かれているものもある。

治療
現代医学では根本的な原因を治療する事は不可能とされている。「TEACCH」「ソーシャルスキルトレーニング」などの各種プログラムなどによって、健常者に近い社会生活が送れるようになる場合もあるが、これらのプログラムは補助的な方法であり、根本的な原因が治癒した訳はないとされる。

歴史
黎明期
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の児童精神科医であるレオ・カナーが「早期幼児自閉症」として1943年に報告した。カナーは、「聡明な容貌・常同行動・高い記憶力・機械操作の愛好」などを特徴とする一群の幼児に対し、統合失調症(精神分裂病)の状態を表す用語である「自閉」という言葉を用い、「自閉症」(オーティズム)と名づけたのである。カナーは、自閉症の原因は親の愛情不足だと考え、自閉症児の母親を「冷蔵庫マザー」と呼び、愛情を持って育てれば治癒するであろうと考えた。またカナーは自閉症を統合失調症の幼児版であると考え、「小児分裂病」とも呼んだ。またカナーは自閉症児について、「先天的な知的障害があるわけではなく、心を閉ざしているだけであり、本来は聡明なのだろう」と考えた。なお、カナーはこれ以降、自閉症の研究で自説に反する新事実が発見されると、自説の誤りを認識し訂正していった。カナーの報告した子供たちは、現在の低機能自閉症に当たるとされる。

翌年の1944年、オーストリアのウィーン大学の小児科医ハンス・アスペルガーが、カナーの報告よりも一見軽度ではあるが、共通点がある一群の子供たちのことを報告した(両者に交流はない)。当時ヨーロッパは大戦中であり、オーストリアは敗戦国側であったため、この報告は戦勝国側では80年代まで脚光を浴びることはなかった。アスペルガーの報告した子供たちは、現在の高機能自閉症に当たるとされる。

愛情不足説
カナーの報告から1960年代ごろまで、精神分析家のブルーノ・ベッテルハイムらにより後天的原因説(「冷蔵庫マザー」理論)が唱えられていた。各地の治療施設では、虐待によって発症したのならばその逆をやればよいとの考えのもと、「絶対受容」という治療方針が取られたが、あまり治療効果はなく、むしろ成年以降の社会適応が困難になったといわれる。ベッテルハイム自身も障碍児の入所施設の所長であったが、入所児童への虐待やデータ捏造などがあったという疑惑がある。なお、ベッテルハイムはのちに自殺した。

アメリカの精神分析のメッカであるカール・メニンガー病院では、一時期自閉症も精神分析治療の対象としたが、精神分析が自閉症に効果がないと判明すると、潔く自閉症部門を閉鎖した。このように精神分析や受容療法などの試みが一時期脚光を浴びたが、あまり効果がないと次第に分かってきた。

脳障害説
1960年代後半、イギリスのモズレー病院のマイケル・ラターによって、自閉症は先天性の脳障害だという説が発表され、自閉症の学界はコペルニクス的転回を迎えることになった。現在でも自閉症の原因は諸説あるが、現在主流の説はラターの説が元となっている。

またこのころになると、自閉症と統合失調症はまったく違う障害である事が分かってくる。

高機能自閉症
アスペルガーの死去の翌年の1981年に、自身にも自閉症の娘がいるモズレー病院の医師ローナ・ウィングが、英語圏ではほとんど忘れられていたアスペルガーの論文を英訳して再発表し、高機能自閉症の存在を広く知らせた。それまでのイギリスでは知的障害のある自閉症児にしか福祉の手が差し伸べられていなかったのであるが、自閉症の本質は知的障害や言語障害ではなく対人関係の障害であるため、高機能自閉症も支援の対象にするべきだとの考えである。


世間への影響
遺伝子の異常が原因だとの説、水銀などの重金属の蓄積が原因だとの説などがある。一時期、七田眞や岩佐京子らによって「テレビの見せすぎが自閉症の原因」などの環境原因説が流行し、自閉症の子を持つ親は周囲から責められてつらい立場であったが、現在ではごく一部の学者以外は、自閉症は先天性の障害であり、育て方が原因ではないとしている(岩佐はのちに自説を一部撤回)。

日本ではベッテルハイムの著書「虚ろな砦」が広く読まれたため、未だに自閉症は虐待や過保護が原因である「母原病」であるとの認識が一部に根強い。

マンガやエッセイでの誤用例
 攻殻機動隊(講談社/作者/士朗正宗)マンガ 第1巻 脳以外を義体化している主要人物のセリフ「節電のため(脳を)自閉症モードに」
「自閉モード」ならともかく「自閉症モード」なので、既存の自閉症を意識して書かれた表現だと思われるが、「自分を、または、自(みず)から閉じている」という、80〜90年代の描かれた当時の自閉症に対する一般的な認識、イメージに拠っていると思われる。

しかし例えば、一般の人の(脳は)特定の音だけ選別して聞くことができるのに対して、自閉症の場合はあらゆる雑音を収拾してしまい立ち往生しているような(まるで「自閉」というより「自開」とでも表現するほうが適当であるような)状態を考えれば、マンガの「自閉症モード」という表現は正確には不適当で、自閉症に対する誤った認識の使用例と言える。

 「良いおっぱい 悪いおっぱい」(集英社/個人的な妊娠、出産、育児といったことについて、最初に語った詩人の伊藤比呂美氏の著書)より
「(赤ちゃんに)話しかけなさいと産んだ先生にも本にも書いてあるが続かない。」「(中略)こんなことを続けていたらいつかうちの子は『自閉症』とかそういう心身に障害のある子に育つのではないか」「(〜という生活をしていたわけですが私のアカンボは)自閉症にはなりませんでした」という表現がある。

AQ測定による調査でわかったこと
社会人や大学生の中にも、少数だがAQ上でAS/HFA群と同じ程度の高得点を示す人がいる
自閉症の診断を受けていない人にも、自閉症的な傾向を持つ人がいる
AQで測定される自閉症スペクトラム傾向にはかなりの個人差がある
今後自閉症症状のメカニズムを解明する上で、アナログ研究的アプローチが可能である
●自閉症スペクトラム指数のカット・オフ点

自閉症スペクトラム指数で高得点(33点以上)をとった学生12名を診断したところ、12名中7名が自閉性障害またはアスペルガー障害の診断基準にあてはまった(ただし、生育史が不明であることと、現在不適応を起こしていないため、自閉性障害とは診断されていない)。

自閉症スペクトラム指数33点以上には成人のアスペルガー症候群・高機能自閉症者群の9割近く(87.8%)が含まれるのに対し、健常群で33点以上をとるのはわずかに3%弱であることから、自閉症スペクトラム指数のカット・オフ点(健常者と自閉症の識別点)は33点と決定された。[1]

●自閉症の極端男性脳理論

Baron-Cohenは、自閉症スペクトラム指数の調査結果から、「自閉症の極端男性脳理論」を提唱した。

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タグ:自閉症
posted by 塾長 at 15:50 | 日記
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